手抜き塗装の恐ろしさ

塗装の品質は下塗りで決まる

塗装で最も重要な工程は、下地調整と建材の種類に応じた下塗りです。どんなに高機能の塗料を使っても、下地に密着しなければ意味がないのです。また下塗りは文字通り下塗りですから、上塗りした後から塗ることは不可能です。
いちど手抜き塗装をされると、後々まで塗膜剥離の可能性が続く。これが下塗りを省く手抜き塗装の本当の恐ろしさです。取り返しがつかないのです。

前回塗装が1回塗りの手抜き塗装であっても、後から塗膜を完全に剥離することはできません。当社といえど、この上から塗るしかないのです。しかも上塗りした後では気付きにくく、何年も経ってから発覚することなので始末が悪い。
以下は、当社が依頼を受けて点検調査した際に判明した、前回塗装が手抜きであった数々の事例です。


ベランダデッキ下状況(鋼製+亜鉛メッキ製)確実に手抜き工事です。このデッキ下は亜鉛メッキ製ですので、必ず専用プライマー処理からの塗装工程が必要です。しかし、錆び止めどころか直にペンキを塗ってあるだけです。これでは密着はしません。
又、弊社にて施工したとしても、今からでは専用プライマーを塗る事が出来ない為、今後塗膜剥離が起こる事が懸念されます。確実な目荒らし・研磨等の下地調整作業を行い、少しでも密着するよう努めますが、予めご理解下さい。


点検時に発見した横樋受け金物の手抜き塗装です。施主様には分かりにくい所ですね。
非鉄金属製ですから、専用プライマー処理からの塗装工程が必要です。密着不良が起こり易い金物ですので、この工程は必ず取り入れなければいけません。
しかし、これは下塗りを省くというより、最初から受け金物を専用の塗料で塗る気が無かったのでしょう。外壁用塗料をいい加減に塗りたくっただけの施工です。下から見ても分かりませんからね。


こちらは別件の横樋と受け金物ですが、時が経つとこのような状況になります。悲惨としか言えません。目荒らし・研磨等の重要性を無視した施工です。これでは密着はしません。この状態では弊社が塗っても今後の密着性が懸念されます。


屋根状況(カラーベスト)色あせというより、密着不良から流れ落ちたと考えるべきです。シーラーを塗布する際の希釈率等に問題があったのではないでしょうか。そうでない限り、ここまでの色あせは起きません。高圧洗浄作業時に、付着した不純物や汚染層を除去する事は基より、シーラー処理は濡れ色になるまで、たっぷりと浸透させる事を心がけ、充分に乾燥させてから本塗りに掛かる事が大切です。


屋根状況(カラーベスト)黄色い囲み部の棟板金は鋼板ですので、目荒らし等の下地調整、錆止め処理からの塗装工程が必要です。赤い囲み部の雪止め金物は、非鉄金属類ですので、専用プライマー処理が必要になります。青囲み、カラーベスト表面は浸透性プライマーと、屋根は3種類の部材から形成されているため、それぞれ異なった下塗り工程になります。
これを怠って、一律な下塗りで塗装すると数年後には塗膜剥離が生じ、屋根の寿命を縮めてしまいます。上塗りした後ではわかりませんので、塗装工程には注意が必要です。


霧除け・広小舞状況(木製)考えられないことですが、腐食の上から塗ってあります。前回の工事の際から腐食があったものと判断致しました。この様な場合は塗装では対処しきれませんので、下地作成からの塗装工程が必要です。


ベランダ笠木状況(鋼板)経年劣化からの退色ではありません。これは規定の塗装回数をごまかしています。本来、錆止め・中塗り・上塗りと手順を踏めばこの様な退色は致しません。明らかな手抜きです。
確実な目荒しは基より、錆止め処理からの規定の希釈率を守った、規定回数通りの塗装工程が大切と弊社では考えております


霧除け破風状況(木製)前回塗装工事時のパテ処理不具合が見られました。木製下地が丸見えです。これは目止めという下地処理を怠っているものです。確実な目止め処理からの塗装工程が必要です。


破風状況(鋼板)塗膜剥離が見られました。錆止め処理(金属処理)を怠った事からの塗膜剥離です。この上から塗装をしても密着するとは考え難い状況です。既存塗膜が鋼板と接しているところがあり、全て剥さなければ密着性は弱いと考えます。出来る限り目荒し・研磨作業にて、少しでも密着性を高める工夫が必要です。

下塗りの大切さ

下塗りの大切さは、いくら強調してもしすぎることはありません。どんなに高価で高機能の塗料でも、下地に密着しなければ性能を発揮できないのです。そのためには、建築素材に適合した適切な下塗り工程が重要になります。
手抜き塗装は、せっかくの高機能で高価な塗料が無駄になってしまうばかりでなく、塗装することで反対に家の寿命を縮めることになりかねません。

下塗りは上塗りの後では分かりにくい工程なので、格安・手抜き塗装の常套手段となっています。当社の調査点検で、下塗りを省いた手抜き塗装を発見することは珍しくありません。
手抜き塗装が横行している事実、同じ塗装業者として、とても残念なことです。